保険内の訪問看護の回数が足りないとき、どうすればいい?

訪問看護は、高齢者や病気療養中の方が自宅で安心して生活できるよう、看護師が定期的に自宅を訪れて必要なケアを提供するサービスです。このサービスは、患者やその家族にとって心強いサポートとなります。しかし、介護保険や医療保険の制度内で提供される訪問看護の回数には上限があるため、必要なケアが回数制限によって十分に受けられない場合があります。この記事では、訪問看護の回数が足りないときにできる対策について、わかりやすく且つ実用的に説明します。

保険内の訪問看護の仕組み

まず、訪問看護は介護保険と医療保険のどちらかの制度で受けることが可能です。選択は主治医の判断や患者の病状に基づきますが、どちらの保険でも回数に上限が設けられています。

介護保険の場合

  • 訪問看護は、介護保険のケアプランに基づいて提供されます。ケアプランでは、訪問看護だけでなく、デイサービスや訪問リハビリテーションなど、複数の介護サービスを組み合わせて、支援内容を決定します。
  • 原則として、介護保険の訪問看護は週に数回程度が一般的です。ただし、要介護度や個別の状況によって、回数が異なることがあります。具体的には、要介護度が高い場合や特別な医療的ケアが必要な場合には、少し多めの回数が設定されることもあります。

医療保険の場合

  • 医療保険での訪問看護は、病状の安定が難しい場合や終末期ケアなど、より医療的なサポートが必要な場合に適用されます。医療保険の訪問看護も、回数に上限があり、特定の条件下では制限が設けられています。
  • 例えば、急性期を過ぎた後の安定期に入っても、医療的に継続的なケアが必要と判断される場合には、訪問看護の利用が可能です。

訪問看護の回数が足りないと感じたら?

保険内で提供される訪問看護の回数では、十分なケアが受けられないと感じることもあります。そんなときには、複数の選択肢があります。

ケアプランの見直し

まずはケアマネージャー(介護支援専門員)に相談して、ケアプランの見直しを検討しましょう。介護保険内で他のサービス(例えば訪問介護やデイサービス)を活用して、訪問看護の代わりになる支援を受けることが可能です。また、必要に応じて訪問看護の回数を増やす交渉も行うことができます。ケアマネージャーは、患者や家族の意向を尊重しつつ、医療機関やサービス提供者とも連携して、最適なプラン作成をサポートします。

自費訪問看護を活用する

保険内の訪問看護だけでは回数が足りない場合、自費訪問看護を利用することも一つの方法です。自費訪問看護は、保険を利用しないため、回数や時間に制限がなく、利用者のニーズに合わせたケアを受けることができます。特に、夜間や週末など、保険ではカバーできない時間帯に利用できるのが大きなメリットです。

自費訪問看護のメリット:

  • 柔軟な対応:保険内の訪問看護では難しい、急な体調変化への対応や、介護者が不在の時間帯のサポートが可能です。また、急に必要になった場合でも、迅速に対応してもらえることがあります。
  • 利用者に合わせたプラン:自費サービスなら、時間や内容を自由に調整でき、より個別に対応したケアを受けられます。

自費訪問看護のデメリット:

  • コストの負担:自費のため、サービスを受ける回数や時間に応じて費用がかかります。利用前に費用を確認し、家族で相談することが重要です。

その他の支援サービスを活用する

訪問看護の回数が足りない場合、訪問介護や訪問リハビリなど、他の在宅サービスを利用することも可能です。また、地域の福祉サービスやボランティア団体の支援を活用するのも一つの方法です。

  • 訪問介護:訪問介護員(ヘルパー)が自宅に訪問し、身体介護(食事や排泄の介助)や生活援助(掃除や買い物の代行)を行います。訪問介護は、日常生活におけるさまざまなサポートを提供し、安心して生活できる環境作りを助けます。
  • 訪問リハビリ:理学療法士や作業療法士が自宅でリハビリテーションを提供し、身体機能の維持や改善を目指します。個々の状態に応じたリハビリ計画が立てられ、効果的なアプローチを実施します。

介護保険の訪問看護の限度額の決定方法

要介護度による区分

介護保険の訪問看護の限度額は、利用者の要介護度に応じて細かく設定されています。要介護度は、要支援1から要介護5までの7つの区分に分かれており、それぞれの区分に対して月ごとの支給限度額が定められています。この要介護度は、利用者の身体的および精神的な状態を詳細に評価した結果として決定されます。

具体的な支給限度額

  • 要支援1: 月5,003単位
  • 要支援2: 月10,473単位
  • 要介護1: 月16,692単位
  • 要介護2: 月19,616単位
  • 要介護3: 月26,931単位
  • 要介護4: 月30,806単位
  • 要介護5: 月36,065単位

これらの単位数は、1ヶ月に受ける介護サービスに保険が適用される上限を示しています。この単位はサービスの種類や提供頻度によって消費されるため、利用者は計画的にサービスを選ぶ必要があります。

ケアプランの作成

利用者が介護保険サービスを利用する際には、ケアマネージャーが利用者の生活スタイルやニーズに基づいたケアプランを作成します。このケアプランは、利用者の要介護度や生活状況に基づいて、必要なサービスを計画し、支給限度額内で収まるように調整されます。ケアマネージャーは利用者やその家族と定期的に話し合いを持ち、状況に応じてケアプランを見直すことも重要です。

限度額を超えた場合の対応

支給限度額を超えてサービスを利用した場合、その超過分は全額自己負担となります。したがって、ケアプランの作成時には、限度額を超えないように注意が必要です。利用者や家族は、サービスの選択に対して慎重に判断し、限度額内で最適なケアを受けることが望まれます。

特例措置

特定の疾病や状態に該当する場合、通常の限度額を超えて訪問看護を受けることができる特例があります。例えば、厚生労働大臣が定める「別表7」や「別表8」に該当する場合、医療保険が適用され、より多くの訪問看護を受けることが可能です。これにより、急な状態の悪化や特別な医療ニーズに対して柔軟に対応することができます。

まとめ:自分に合った訪問看護の回数を確保するために

保険内の訪問看護の回数が足りないと感じたときには、まずケアマネージャーや医師に相談してケアプランを見直すことが大切です。必要に応じて自費訪問看護や他の在宅サービスを活用し、家族や患者にとって最適なケアを提供できるよう調整しましょう。訪問看護の回数や内容を上手に組み合わせることで、安心して在宅生活を送ることが可能です。訪問看護の選択肢を広げることで、患者のQOL(生活の質)を向上させ、より豊かな日常生活を実現することができるでしょう。
介護保険の訪問看護の限度額は、利用者の要介護度に基づいて決定され、ケアマネージャーが作成するケアプランによって管理されます。限度額を超えた場合は自己負担となるため、計画的な利用が求められます。また、特定の疾病や状態に該当する場合には特例措置が適用されることもあります。利用者が安心して訪問看護を利用できるよう、介護保険制度は柔軟性と計画性を重視した設計となっています。

投稿者プロフィール

58b3036776458177083fe7087a65f924?s=100&r=g
信岡 俊孝
経験と資格 信岡俊孝氏は2011年に看護師免許を取得し、13年間病院での勤務経験を持っています。京都の愛生会山科病院では消化器内科や循環器内科、整形外科など幅広い分野で臨床経験を積み、その後、福岡の長尾病院で透析科や回復期リハビリ病棟を担当しました。
2024年には、看護師の働き方改革を目指して株式会社ShiNを設立。

保有資格
看護師免許 (2011年取得)
AFP (Affiliated Financial Planner, 2024年取得)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
販売士2級
第一種衛生管理者免許
ビジネスマネジャー検定試験®
ビジネス法務エキスパート® (2級)
日本商工会議所簿記検定試験3級
第二種電気工事士

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA