妊娠中・授乳中・妊活中の「カフェインとの付き合い方」

  • 妊娠中はカフェインを制限しつつ、デカフェ・カフェインレス・ノンカフェイン飲料を上手に取り入れることで、健康とリラックスを両立できる。
  • 妊娠初期〜後期、授乳、育児と時期ごとに体の状態が変化するため、「安全性」を常に確認することが大切。
  • 麦茶・黒豆茶・ルイボスティー・ハーブティーなどの健康茶は、体に優しいノンカフェイン飲料として、妊婦だけでなく家族全体にもおすすめ。
  • カフェオレ・カフェラテ・ココアなどミルク系飲料をうまく活用すれば、心も体も満たされる「安心のティータイム」が実現できます。

飲み物別:妊娠中の安全性と特徴

飲み物/飲料カフェイン量(目安)妊娠中の安全性コメント
コーヒー約80mg/150ml△(1日1杯まで)通常より控えめに。デカフェ推奨
デカフェコーヒー約2〜5mg/150ml水抽出・有機認証製品が安心
カフェラテ/カフェオレ約60mg/200mlミルク添加で刺激緩和
紅茶約40mg/150ml低カフェイン紅茶やカフェインレス紅茶が理想
烏龍茶約30mg/150mlローカフェインタイプを選択
麦茶0mgノンカフェイン・鉄吸収阻害なし
黒豆茶0mgポリフェノール豊富・血糖安定化効果あり
ハーブティー0mg◎(種類による)カモミール・ルイボスは妊婦に人気
ルイボスティー(有機)0mg妊娠中・授乳中どちらにも安全
ココア(純ココア)約5〜10mg/200ml鉄・マグネシウムを補給できる

1. なぜ「カフェイン」に配慮するのか

背景とメカニズム

  • カフェインは成人では速やかに代謝されますが、妊娠中はこの代謝速度が低下します。ですので、カフェインの影響が長く残る可能性があります。 (MomJunction)
  • また、カフェインは胎盤を通過し、胎児側に移行します。胎児はカフェインを分解・排出する能力が大人ほど高くありません。 (Verywell Health)
  • 多くの研究・ガイドラインでは、妊娠中に過剰なカフェイン摂取が「低出生体重」「早産」「流産」「妊娠期間が短くなる」などのリスク上昇と関連があると指摘されています。 (Tommy's)
  • 例えば、英国の Tommy’s の資料では「妊娠中は 200 mg/日未満にすべき」と明示しています。 (Tommy's)

日本/世界のガイドライン

  • 英国 NHS(National Health Service)では、妊娠中のカフェイン摂取は 200 mg/日未満に抑えるよう案内しています。 (Tommy's)
  • 米国でも American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)等が「概ね 200 mg/日まで」が安全の目安としています。 (Parents)

以上から、妊娠中には「カフェインを完全にゼロにしなければならない」というわけではないものの、安全性を考えれば“摂取量を控える”というのが一般的なスタンスです。

2. 妊娠とカフェインの関係:なぜ制限が必要なのか

カフェインの効果と影響

カフェインは、眠気を抑え、集中力を高める効果がある一方で、血圧上昇・利尿作用・心拍数上昇をもたらします。
妊婦や授乳中の方では、これらの作用が母体や胎児に影響する可能性があります。妊娠中は肝臓の代謝機能が変化し、カフェインの分解速度が通常の半分以下になることが知られています。そのため、同じ量でも体内滞留時間が長くなり、胎児へ移行しやすくなります。

胎児への影響

  • 胎児や新生児はカフェインを代謝する酵素が未成熟であるため、神経発達への影響や低出生体重のリスクが報告されています。
  • 欧米の研究では、1日200mgを超えるカフェイン摂取が流産や発育遅延のリスク上昇と関連する可能性が指摘されています。
  • 妊娠初期(〜12週)は器官形成期で特に敏感なため、カフェイン制限またはノンカフェイン飲料への切替が推奨されます。

3. 「デカフェ(Decaf)コーヒー」とは何か

定義・カフェイン含有量

  • デカフェ(あるいは「低カフェインコーヒー」)とは、コーヒー豆あるいは焙煎後の製品からカフェインを「できるだけ」除去したコーヒーを指します。 (ウィキペディア)
  • 完全にカフェインがゼロというわけではなく、通常のコーヒーに比べてかなり少量に抑えられています。具体的には、8 オンス/約240 mL のデカフェ1杯で平均「約2.4 mg」程度とする報告があります。 (Healthline)
  • ただし製品・ブランド・抽出方法によっては「14 mg/約475 mL」のカフェイン含有が確認されたというデータもあります。 (Healthline)

脱カフェイン処理の方法と影響

コーヒー豆からカフェインを除く方法には複数あり、妊娠を考えるうえで「どの方法で処理されたか」を知っておくことが意味を持ちます。例えば:

  • 水だけを使う方式(例:Swiss Water Process)…化学溶剤を使わない方法として“安全志向”の選択肢として紹介されています。 (American Pregnancy Association)
  • 二酸化炭素(CO₂)方式、メチレンクロライド(溶剤)方式など…中には化学溶剤を使う方式もあります。例えば、オーストラリア/ニュージーランド食品基準局(Food Standards Australia New Zealand=FSANZ)でも「メチレンクロライドの残留量」について言及されています。 (ABC)
  • そのため、妊娠中や妊娠の可能性がある場合には、脱カフェインだけでなく「どの処理法か」を確認することが推奨されている文献もあります。 (Parents)

それぞれの呼び方の違い

種類含まれるカフェイン量特徴備考
デカフェ(Decaf)ごく少量(約1〜5mg/100ml)コーヒー豆などから化学または水抽出法でカフェインを除去「低カフェイン」とほぼ同義
カフェインレス約90%以上カット日本の表示基準では「90%以上除去」完全ゼロではない
低カフェイン/ローカフェイン通常の1/2〜1/10程度一部カフェインを残すタイプ妊娠中でも少量を楽しみたい人向け
カフェインカットデカフェと同義ブランドによっては“ゼロ”と誤解されやすい表示確認が重要
ノンカフェインカフェイン完全ゼロ麦茶・黒豆茶・ルイボスティーなど妊婦・授乳期・妊活中に最適

4. 妊娠中・妊娠の可能性ある時の「カフェイン」の考え方

ここでは、メリット・リスク・実践的なポイントを整理します。

メリット

  • 通常のコーヒーに比べてカフェイン摂取量が非常に少ないため、カフェインによるリスク(前述の低出生体重・早産・流産など)を更に低く抑える可能性があります。 (Healthline)
  • “コーヒーの味・香り・習慣”を楽しみながら、カフェイン摂取を制限したいという方にとって選択肢となりうる。
  • 妊娠初期(胎児・母体の変化が大きい時期)や、カフェインに敏感になっている時期には、心理的にも安心感をもたらすことがあります。

リスク・注意点

  • デカフェでも完全ゼロではないという点。カフェインが数 mg~十数 mg含まれている可能性がありますから、他のカフェイン源(紅茶・緑茶・コーラ・チョコレート等)と合算して考える必要があります。 (Healthline)
  • また、脱カフェイン処理の方法によっては、溶剤(例:メチレンクロライド)等の残留が指摘されており、妊娠中はより慎重な選択が望ましいという記事もあります。 (ABC)
  • 研究によっては、デカフェ利用だけでリスクが全くないとは断言されておらず、例えば「デカフェだけを飲んでいた群で小・早産リスクの上昇が認められなかった」という報告もありますが、他の研究では流産リスク上昇の示唆もあります。 (Healthline)
  • 妊娠中や妊娠初期は、体調・吸収代謝が変化するため、カフェインに限らず飲食物全体について慎重になる必要があります。

実践ポイント:どう使うか

以下、実際にデカフェを利用するにあたっての具体的な指針です。

  1. 摂取量を把握する
    • デカフェであってもカフェインが含まれている可能性があるため、「1杯何 mgか」をラベルや製品情報で確認できるものを選びたい。
    • 他に飲んでいるカフェイン含有飲料(例えば紅茶・緑茶・コーラ・エナジードリンク)やチョコレートも“カフェイン源”として数えるべきです。例えば英国 NHSでは「コーヒー1杯+チョコレート+コーラ」などで合計200 mgを超えるケースありとしています。 (Tommy's)
  2. 脱カフェイン処理法を確認する
    • メーカーやブランドが「Swiss Water Process」「CO₂方式」「化学溶剤未使用」などを明示している場合、妊娠中には安心材料となります。逆に「処理方法の記載なし・価格が極めて安い」ものは、処理方法が不明なこともあります。
    • もし不安であれば、カフェイン0(または極少)をうたった「カフェインフリー」のブレンド(コーヒー風飲料やハーブコーヒー)に切り替えるのも一案です。
  3. タイミング・習慣に配慮する
    • 妊娠中は「夜間の睡眠」「胎動感」「疲労感」が変わりやすいため、カフェイン(少量でも)による興奮・睡眠妨害を避けたい場合があります。デカフェを選ぶことで、夜の一杯を安心して楽しめる可能性があります。
    • ただし、味覚・嗜好が変わることもありますので、「デカフェでもおいしい」「香りが好き」と感じるブランドを事前に探しておくと良いでしょう。
  4. 医師・助産師と相談する
    • 妊娠経過や母体・胎児の状態によっては、個別に「カフェイン完全回避」や「特定飲料の制限」が指示される場合があります。デカフェでも不安があるなら、主治医・助産師に「このブランドのデカフェはどうか?」と聞くのが安心です。

5. よくある誤解とその整理

以下、誤解されやすいポイントとその整理です。

誤解①:「デカフェ=完全に安全/何杯でも飲める」

→ 実際には「少量のカフェイン含有+処理法による化学残留の可能性」があります。安心材料ではありますが“無制限”ではありません。
例えば、デカフェでも胎児の呼吸活動・心拍数に影響があったという研究があります(8名妊婦・32〜36週)にて、デカフェ摂取後にわずかに胎児心拍が低下したというもの。 (PubMed)
もちろん、これは少人数・限られた条件の研究ですが、「何もしなくてよい」という根拠にはなりません。

誤解②:「カフェイン制限=完全ゼロにしなければならない」

→ 多くのガイドラインは「200 mg/日未満」など“上限”を示しており、「完全ゼロのみが安全」という厳密な証拠はありません。 (American Pregnancy Association)
ただし、胎児リスクを極力減らしたいという観点から「可能であればカフェインをできるだけ少なめに」とする考え方もあります。 (NHS England)

誤解③:「安価なデカフェは同じ価値」

→ 処理法や残留物質、香り・味の差がブランドによってあります。妊娠中には「どの処理法か」を選ぶことが、少し余分に安心をもたらします。


6. 妊娠各期におけるデカフェ利用の考え方・おすすめ飲み物と注意点

妊娠の時期別に多少考慮すべき点があります。

初期(〜12週あたり)

  • 胎児器官形成期・流産リスクの高い時期でもあり、母体もつわり・疲労・感覚変化が出やすい時期です。
  • この時期は「カフェインをできるだけ少なく」「コーヒー習慣を控えめに」する方が心理的にも安心できます。デカフェへの切り替え・または黒豆茶・麦茶・ハーブティー等への代替も検討されます。
  • 嗜好の変化(味覚・匂い)も起こりうるため、「今まで飲んでいたコーヒーが急に受け付けなくなった」というケースもあります。

カフェインレスコーヒー/低カフェイン紅茶:香りでリラックスできるが1日1杯程度に制限。
麦茶・黒豆茶・ルイボスティー(有機推奨):ノンカフェインで胃にも優しく、ミネラル補給にも最適。
ハーブティー(健康茶):カモミール・レモンバームなどは安眠効果あり。ただし、セージやローズマリーなど妊娠中に避けるべきハーブもあるため、成分表を必ず確認。
ココア鉄分やマグネシウムを含むため、甘味控えめの純ココアがおすすめ。

中期(13〜28週)

  • 妊娠安定期とも言われ、活動性が増す方も多くなる時期です。コーヒー・デカフェを含め“習慣的な飲み物”をゆるやかに取り入れたくなる時期でもあります。
  • デカフェを選ぶことで、味・香り・ひと息つく時間を保ちつつ、カフェイン量を低く抑えることが可能です。
  • ただし、夜間の睡眠のための配慮・体内水分バランス・鉄分吸収(コーヒーに含まれるポリフェノールが鉄の吸収を妨げることも)などは留意すべきです。

デカフェ・カフェラテ・カフェオレ:ミルクを加えることでカルシウム補給にもなる。
有機ルイボスティー:抗酸化作用が強く、鉄分吸収を妨げない。ノンカフェインで体に優しい。
黒豆茶・麦茶:利尿作用が穏やかで、浮腫対策にもなる。
健康茶(グリーンルイボス・ごぼう茶など):抗酸化・代謝サポートに有効。

後期(29週〜出産直前)

  • 胎児の成長スピードがますます速まり、母体も負荷を感じやすい時期。眠気・疲れ・胎動・夜の体位変化などで“休息”が重要になります。
  • デカフェを飲むことで、「味はコーヒーだけど眠れなくなる・動悸がする」といったカフェイン過多のリスクを更に小さくできます。
  • 出産準備での“リラックスタイム”として、香りのよいデカフェコーヒーを用いるのも良いでしょう。ただし、出産直前には体調優先で飲み過ぎないように。

ノンカフェイン飲料中心に:睡眠の質を保ち、胎動や血圧変動を安定させる。
デカフェコーヒーの摂取は午前中までに。夜はルイボスや黒豆茶が理想。
有機麦茶・穀物茶はミネラル補給にも優れる。

7. 授乳期・妊活期・育児中のカフェイン管理

授乳中

  • 母乳にもカフェインが微量移行します。赤ちゃんの睡眠リズムや不機嫌に影響する場合があるため、1日200mg以内が目安。
  • デカフェ・カフェインレス・ノンカフェイン飲料を選ぶことで、母体と乳児双方のリズムを整えられます。
  • 授乳直後にカフェインを摂ると、次の授乳までに代謝が進むため影響が少ないとされます。

妊活中

  • 妊娠を望む段階では、ホルモンバランスを整える観点から**カフェインの摂取制限(1日100mg以下)**が推奨されます。
  • ノンカフェインの有機ルイボスティー・黒豆茶・たんぽぽコーヒーなどがホルモン環境の安定に寄与するとされます。

育児中

  • 睡眠不足・ストレス解消にコーヒーを求める場面も多いですが、デカフェコーヒーやカフェインカットココアを選ぶことで安心してリラックスできます。

8. 妊婦におすすめの「有機・安心」ブランド例

  • スターバックス デカフェ ハウスブレンド(CO₂抽出法・カフェイン約3mg/100ml)
  • UCC おいしいカフェインレスコーヒー(ドリップタイプ)
  • マリアージュフレール「カフェインレスアールグレイ」
  • オーガニック ルイボスティー(有機JAS認証)
  • 黒豆茶〈北海道産無農薬〉/伊藤園健康麦茶 ノンカフェイン

9. 安全に楽しむための実践ポイント

  1. 一日の合計カフェイン量を200mg以下に(妊娠中の国際的推奨値)。
  2. デカフェ・カフェインレスでも完全ゼロではないため、他の飲料と合算して管理。
  3. 夜はノンカフェイン飲料に切り替えることで睡眠の質を確保。
  4. 有機(オーガニック)認証商品を選ぶと化学溶剤リスクを避けられる。
  5. 鉄・カルシウム吸収を妨げない飲み方(食後1時間以上あけて摂取)。
  • 普段コーヒーを楽しんでいた方にとって、デカフェコーヒーは“味・習慣を保ちつつカフェイン量を抑える”有効な選択肢です。
  • ただし「デカフェ=カフェインゼロ」「無条件に安全」というわけではありません。カフェイン含有量・他飲料との合算・脱カフェイン処理法のチェックは重要です。
  • 妊娠初期〜後期のどの段階でも、体調・胎児発育・睡眠・嗜好等が変化するため、「自分の体の変化をよく観察」「医師・助産師との相談」を基に飲み物習慣を見直すことが大切です。
  • コーヒーを完全に断つ必要は必ずしもありませんが、「安心して楽しむための工夫」としてデカフェを検討する価値があります。

10. まとめ:妊娠中・授乳中・妊活中の「カフェインとの付き合い方」

  • 妊娠中はカフェインを制限しつつ、デカフェ・カフェインレス・ノンカフェイン飲料を上手に取り入れることで、健康とリラックスを両立できる。
  • 妊娠初期〜後期、授乳、育児と時期ごとに体の状態が変化するため、「安全性」を常に確認することが大切。
  • 麦茶・黒豆茶・ルイボスティー・ハーブティーなどの健康茶は、体に優しいノンカフェイン飲料として、妊婦だけでなく家族全体にもおすすめ。
  • カフェオレ・カフェラテ・ココアなどミルク系飲料をうまく活用すれば、心も体も満たされる「安心のティータイム」が実現できます。

引用・参考

投稿者プロフィール

信岡 俊孝
信岡 俊孝
経験と資格 信岡俊孝氏は2011年に看護師免許を取得し、13年間病院での勤務経験を持っています。京都の愛生会山科病院では消化器内科や循環器内科、整形外科など幅広い分野で臨床経験を積み、その後、福岡の長尾病院で透析科や回復期リハビリ病棟を担当しました。
2024年には、看護師の働き方改革を目指して株式会社ShiNを設立。

保有資格
看護師免許 (2011年取得)
AFP (Affiliated Financial Planner, 2024年取得)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
販売士2級
第一種衛生管理者免許
ビジネスマネジャー検定試験®
ビジネス法務エキスパート® (2級)
日本商工会議所簿記検定試験3級
第二種電気工事士

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